さよならの向こう側へ。僕が死ぬほど愛用していた富士フイルムのカメラを手放した理由
本当に、本当に良いカメラだった。
だからこそ僕は手放すことを決めた。
愛用していた富士フイルムのカメラ
僕が生まれて初めて手にしたミラーレスカメラが、富士フイルムの『X-T30』だった。
レンズには神レンズと称される『XF35mmF1.4 R』を付けて。
そのクラシカルな外観とフジが培ってきた“色”の虜になり、本気で「富士フイルムのカメラを一生使っていたい」とさえ思っていたほど。
だけど、カメラにのめり込むほどに「このままでいいのだろうか?」という疑念が湧き起こってしまって。
そして僕は、愛する富士フイルムのカメラを手放すことを決めた。
その理由を以下に記していく。
僕が富士フイルムのカメラを手放した3つの理由
理由は、おもに3つだ。
「フィルムシミュレーション」が優秀すぎる
富士フイルムのカメラには、フィルムの色を再現する「フィルムシミュレーション」という機能が備わっている。
1934年創業。僕が生まれる約60年も前から研究し続けてきたフィルム技術が詰まっているだけあって、これがもう本当にめちゃくちゃ良い色で。
特に「クラシッククローム」の色味に惚れ込んでいて、9.5割はこれ使ってたな。
撮って出しでも思わずニヤけてしまうほど、良い雰囲気の写真が簡単に撮れてしまえて。
それでカメラ素人の僕でも、写真が上手くなったと“錯覚”してしまったのだ。
そう、錯覚。
X-T30を使い始めてから「写真が上手い、写真が綺麗」なんて言われることも増えたんだけど、実際、僕自身は何も成長してなくて。
3年ぐらい使ってた間、まともにRAW現像したこともなければ、思考停止で同じような撮影をしてばっかり。
ただカメラが良い写真を撮ってくれてただけで、僕はその状況に甘えて何のスキルを身につけてこなかったことに気付いてしまったのだ。
みんなが褒めてくれていたのはきっと“フジの色”であって、僕が撮った写真ではないのだと。
そう気付いた時、焦りのような強い衝動に駆り立てたのを今でも憶えている。
「僕にしかできない表現で人を惹きつけられるようにならなきゃいけない」
その瞬間から、もう富士フイルムのカメラとは一旦離れなければ…と思ってしまいました。
カメラの外観へのこだわりが薄れた
何でも見た目から入りがちな僕は、カメラも外観重視でX-T30を選びました。
それは決して悪いことではなく、手放した今でも最高にカッコいいカメラだと思ってるし、お気に入りのカメラと連れ添った時間は本当にかけがえのないものだった。
ただ、シャッターを切るたびに、カメラの見た目よりも写真を撮る「道具」としての使い勝手が気になるようになってきて。
使い始めの頃は何とも思っていなかった部分も、長く使っていると「ここが使いにくいな」と不満を感じることが増えたというか。
いつしか、新しいカメラがリリースされても、見た目よりもスペックばかりチェックするように。
もちろん生理的に受け付けられないデザインってのはあるんだけど、ある程度は許容できるようになったんだと思う。
そういう意味では他社製の方が使い勝手が良さそうな点が多かったし、そろそろ乗り換えてもいい時期に来ているのかなと感じていました。
フルサイズ機のラインナップがない
僕はカメラを始めた時から「いつかはフルサイズ」という思いがあって。
APS-C機のX-T30でも十分満足できる写真は撮れていたんだけど、やっぱりフルサイズへの憧れが消えなくて。
で、いざステップアップしようと思った時に、富士フイルムには無いんですよね。
フルサイズ機が。
その上の中判はあるけど価格やサイズ的にとても手が出ないし、もしかしたらいつかはフルサイズ機もラインナップされるかもしれないとは考えていた。
ただ、仮にフルサイズが将来出たとしても、センサーサイズを変えるとなるとレンズも含めてすべて揃え直さないといけないんですよね。
それならAPS-C用の機材を中途半端に増やしてしまう前に、少しでも早くフルサイズに移行してしまった方が良いなと。
というわけで、ミラーレスでは先端を走っていて、なおかつフルサイズ用レンズが豊富なSONYへとマウントごと移行することを決めました。
さよならの先でまた出逢えたら
以上が、僕が富士フイルムのカメラを手放した理由だ。
読んでもらえたら分かるように、決して富士フイルムのカメラが嫌いになったわけではない。
むしろ好きすぎるからこそ、一度卒業しなければならないと思った。自分自身が成長するために。
そしてこの文章を書いている今、もう僕の手元にX-T30は残っていない。
だけど、フジが培ってきた人を惹きつける色と描写は今もなお、僕の目と脳裏に鮮明に焼き付いている。
これからはそのイメージも糧にしながら、僕だけの表現を追い求めていく。
遠い未来でもいい。
願わくば、いつしか僕がもっとカメラを使いこなせるようになった時にまたフジ機を手にする機会があればいいなぁ。
お互い歩んでいこう。またいつか違う形で出逢えるその日まで。